産業安全文化

安全文化の明確な定義

産業安全文化協創センターは、次の定義に基づく安全文化が、現代の安全管理の礎になると考えています。

安全が他の何よりも優先され、(原子力発電所における)安全問題が最大の関心事として注意が払われ、それを保証する組織および個人の特性と態度の集合体である

国際原子力機関 国際原子力安全諮問グループ

出典:”SAFETY CULTURE” A report by the International Nuclear Safety Advisory Group,
 SAFETY SERIES No. 75-INSAG-4, INTERNATIONAL ATOMIC ENERGY AGENCY VIENNA, 1991

安全文化診断の価値

現代の安全管理の礎に大きく影響する、人の行動に関係する課題がいくつもあります。

  • 本当に危険なものはわかりにくい・慣れてしまう
  • 人間は不適切な環境に置かれると危ない・間違った行動をしてしまう
  • 仕組みで守られている職場であっても、仕組みは劣化することがある
  • 仕組みの劣化はなかなか気づきにくい
  • 自分たちが変わらなくても、環境は日々変化する
  • 現場特有の難しさへも日々対応しなければならない

これらの課題に個人の努力ではなく、組織として整理をしながら立ち向かう力を涵養するのが「安全文化」です。安全文化診断によって組織の課題を『見える化』することが可能です。

安全文化の成熟度モデル

  • 時代の変遷により「確実に予防しなければならない事故」のラインが変化し、今や、多くの産業界で仕組みに支えられた安全文化が必要とされています。
  • 従来から安全文化の醸成に取り組んでいる産業は、多数の従業員が死傷するなどの重大リスクが明確であり、安全管理に経営資源と労力を投入する必要性は会社の存続にかかるものと捉えています。
  • 一方、今、安全文化の醸成が必要とされる産業は、全社的に見れば数年間に複数名の死亡災害や重篤な後遺障害が残る労災が起きたとしても、個々の事業所単位でにおいては、10年間程度の時間軸でみても重篤な災害は起きないかもしれません。
  • そのため、現場従業員にとって作業の柔軟性や容易さと引き換えに確実に事故を防ぐ業務方法へ転換する意義や意味が明確ではありません。これらの産業では、経営層から現場まで安全最優先に管理をしなければ、すぐに生産・利益優先となる行動をとるというような危うい状況に立っていると思われます。

安全文化の8軸モデル

安全文化の8軸モデルとは、組織文化を8つの視点から評価し、安全文化を醸成するためのモデルです。組織統率、責任関与、相互理解、危険認知、学習伝承、作業管理、資源管理、動機づけの8つの軸で構成されています。このモデルを用いることで、組織の安全文化がどのような状態にあるかを可視化し、課題を特定して改善策を講じることが可能になります。

組織が健全かどうか、安全最優先の価値観が共有されているかを見る4軸
安全管理の継続改善と、重大事故につながる予兆の早期発見・早期対応に重要

安全最優先やコンプライアンス重視の価値観を共有し、積極的なリーダーシップの発揮によりこれらの価値観に基づいた組織管理を実行すること。特に、経営者や管理者が日常の経営管理および安全管理において言行一致させることにより、組織全体が安全最優先・コンプライアンス重視といった価値観に対し強固な信頼を持つことが鍵となる。

組織の安全性向上や、長期的な継続改善への原動力となるよう、組織の関係者に対し適切な動機付けを行うとともに、事業所の安全に関わる全ての関係者(協力会社・シニア社員なども含む)の職務満足度とやりがいを高めるための方策を導入すること。

安全に関わる全ての関係者(経営者・管理者・一般従業員・協力会社従業員・取引先・規制当局など)が各々の立場で自主的かつ積極的に組織の安全確保と安全性向上へ関与すること。特に、動機付けの結果として、全ての関係者が具体的な行動として、安全性向上への取り組みや安全最優先の行動・判断を行っていること。

組織内および組織間(同業他社・協力会社・規制当局)における意思疎通、情報共有、相互理解を促進し、共有された情報に基づき継続的改善に取り組むこと。特に、マイナス情報の共有、組織の壁や立場の壁を越えた情報の共有を促し、適切な情報共有に取り組むことが組織と自身双方の利益になる、という価値観が確実に共有されていること。

日々の業務が滞りなく実施されているか、教育訓練やリスクアセスメントなどの活動が確実に行われているかを見る4軸
安全管理の確実な実施と各種事故の未然予防に重要

組織における人的・物的・資金的・情報的資源の管理と配分が適切に行われ、安全確保と安全性向上に必要な資源が十分に割り当てられていること。また、安全投資や人材育成が長期的な視点に基づき計画され、適正にマネジメントされていること。

組織としてリスクアセスメント・変更管理の実施や、危険箇所の表示や潜在リスクに関する情報共有・教育を通じて、全ての従業員が潜在的リスクの発見とリスクへの対応を継続して行えるよう基盤を構築すること。また、発見されたリスクやルールからの逸脱を適切に整理し、体系的なリスク対応を行うこと。

安全に業務を行うために必要な知識と技能を作業標準・手順書・技術基準・技能基準などの形で体系的に整理し、教育・訓練・伝承を確実に行う仕組みを構築すること。特に、背景情報の理解や失敗経験の知識化に取り組むとともに、他組織の事例からも積極的に学び、安全に関わる知識と技能のアップデートと組織学習を推進すること。

安全管理、変更管理、文書管理、技術管理、品質管理、作業標準、技術基準など業務を適切かつ確実に進めるための実効的な管理の仕組みが組織として整備され、組織全体が管理の仕組みを尊重して業務を進めること。

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